夫が何かの試験を受けるというので、ひさしぶりに丸一日息子と過ごす。
息子は朝、ガスコンロの点火や食器を出し入れするなどの支度の音がすると起きてしまうので、夫はおそらく何も食べずにこっそりと出て行った。 少しのんびり、8時前に起きた息子はにこにこして私にめり込んできた。 毎日いちゃいちゃして起きる、というのも、私もそうしたくてしている節もあるが、何より彼は寝起きで機嫌を損ねると恐ろしく厄介なことになるからという理由が大きい。 朝一でトイレに行って、そのままパジャマのズボンを外着に履き替える。 家ではパジャマは上下セットで着ない。 夜に着た長袖Tシャツはそのままで、次の日を過ごす。 息子はここ最近の冬の気温で、外着のズボンが履くときに冷たいと嘆く。 そういえば昔、おばあちゃんは翌日の着替えを布団の中に入れて一緒に寝ていた。 私たちの着替えは炬燵で温めてくれていた。 そんなことを思い出しつつ、家には炬燵もストーブもないので、ドライヤーで息子のズボンを温める。 「あったかい」「よかった」 息子の朝ごはんは、カップのいちごヨーグルト、納豆、チョコパイ、そして私が食べているはちみつヨーグルト。 いつもほとんど同じだ。 私は食パンと、はちみつヨーグルト、コーヒー。 さあて、本日の予定は17時からの息子の美容院のみ。 何をして過ごすのか。 どんなに楽しそうなところに行こうと企画したとしても、彼が行く気にならなければどうしようもない。 特に予定は決めずに、とりあえずは何となく過ごすことにした。 私は家にいると何かしらの生産性を求めてしまうので、こまごまとした家事を始めた。 息子はテレビを見たり、Youtubeを見たり、ピアノ内臓の音楽を聴いたり、比較的ご機嫌に楽しんでいる。 「お外行く?」と聞いても「おそといかない」と返ってくる。 常に閑散としている冷蔵庫だが軽く整理して、調味料入れから期限切れのそれを捨て、シンクと排水溝を念入りに掃除し、ところどころ漂白剤に浸し、洗面台の方もスポンジでこすり、要らない服を切り刻んで雑巾にし、電子レンジで濡らした雑巾を温めてそのまま庫内を拭き、リンスを詰め替え・・・。 捨てたり、掃除したりすることは昔から好きである。 ほうれん草を茹で、梅干しを刻んでオリーブオイルなどでドレッシングを拵え、沸騰したお湯に8分の半熟ゆで卵を作る。 普段ほとんど一日ずつ食べきりなので、常備しているおかずなどはほぼない。 しかし、ドレッシングだけでも作ってあれば、様々に重宝するのでドレッシングはいつも作っておきたいのだがなかなかそれができない。 息子の相手も少々しながら、色々と家事を進めることができた。 11時過ぎになると息子は箸を取り出して「カシャカシャ(ふりかけごはん)食べる」と言うので、ふりかけをかけた小さなおにぎりを作って食べてもらう。 「たまごやきは?ウインナーは?納豆は?唐揚げは?」たんぱく質を摂らせたく聞くが、どれも「いらない」と返ってくる。 私もお腹が空いたので、整理途中で出てきたアルファ米を食べることにした。 今年マンションの避難訓練でいただいた、炊かずに食べられるお米である。 アルファ米を茹でてキムチ雑炊を作る。 午後になって息子はお外行くと言い出したが、タイミングを同じくして頼んでいた端材が届いた。 家具屋さんの木材の端材である。 披露宴のときに席札として、この端材を使ってから、注文するのは三度目である。 今回は文字が好きな息子に駅名などを書くために買った。 とりあえず山手線の駅名を全部、表は漢字で、裏はひらがなで。 息子はお母さんがこの類のことに没頭すると自分がつまらないと分かっているので、お外行くと邪魔をしてくる。 墨がまだ乾ききらないうちに触ってくるので、ふたりで攻防を繰り返す。 作っているものは息子のためだけれど、作っていることは私のためである。 こういうのもひとりで没頭して作りたいものだ。 まあでもそれなりに喜んでくれて、山手線の動画と一緒に見比べながら遊んでくれた。 まだまだ端材はたくさんあるが、やや大きいものも多いので電動のこぎりでも買おうか。 夫に止められそうだけれど。 さて、私は少し満足したところで、お出かけすることにした。 この時点で15時だったのだが、17時の美容院までかなり時間がある。 大人なら、どこかカフェにでも入って本読んだりネットサーフィンしたりすればすぐに過ぎる時間であるが、子どもにとってはそうはいかない。 ちなみに美容院までは30分ほどで着いてしまう。 さて、どうするか、かと言って美容院に遅れるわけにもいかない。 とりあえずは美容院に近づいておこう。 美容院の最寄り駅に着き、ポテト食べる?と聞くと食べる!と言うので、美容院近くのファストフードのお店に入る。 以前も来ているので息子も何となく勝手がわかっているようだった。 15時半くらいから20分ほど滞在しただろうか。 まだ16時前、ここからどうするのか、長い、長いぞ。 近くの公園行ってみようかと、公園に向かい、すべり台を何度もすべった。 もう日暮れで小さい子はみんな帰り始めていて、小学生らしき野球少年たちがすべり台を使って鬼ごっこをしていた。 息子はテレポーテーションのように俊敏に動く小学生が苦手なのだが、あろうことかその小学生にぶつかってしまった。 ケガなどは全く大丈夫だったが、かなりびっくりしたようで大泣き。 小学生はバツの悪そうなひきつった顔をして、次々にスイマセンと謝りに来た。 「大丈夫、なんともないから」と息子をなだめながらその場を離れた。 16時20分。 さあ本格的にやることがない。 電車を見に行ってみよう!と、近くを走っている小田急線を何本が見た。 突っ立って見るには寒い。 そして息子は全然歩かなく、ずっと抱っこしているのも辛い。 ゆっくりゆっくり、美容院の方に近づいて行く。 息子が文字を読んでくれるのがほんの少しの暇つぶしになって有難い。 「おせち承り中です」というような文章を、「おせちりてす」と、堂々と得意顔で漢字を飛び越して読むのが面白い。 ついでに濁音もまだ微妙である。 美容院の前に着くと彼は「着いた!!」と言うが、16:38。 さすがにちょっと早い。 もう少し歩いてみる、歩いてみる、することがない、疲れた、重い。 息子なしなら15分くらい歩いて回ってくることなど訳ないのだが。 16:43、息子は待ちきれずもう行くというので、お店に入る。 「早くてすみません、すこし待たせてください」と言うと「全然大丈夫ですよ~~」と言われる。 手洗いをして、荷物をロッカーにしまうなどして、17時10分前にはカットが始まった。 なんと息子は初めてひとりで美容院の椅子に座ることが出来た。 今までは二人羽織のケープで一緒にやっていたのだけれど。 自分の映っている動画などを見つつ、何ともスムーズにカット完了。 彼の外界へのアレルギー的反応は、ほとんど寛解と言って差し支えないのではないだろうか。 コボちゃんみたいな髪型になって、また抱っこで家路につく。 家に着いて「はぁ~きょうもつかれた」と息子が言う。 私は普段そんなにそのセリフを連発しているだろうか。 ちなみに、抱っこして階段を上るときにも抱かれている彼が「よいしょよいしょ」と言ってくれるけれど。 そして休日のお母さんをたくさん吸収した月曜朝の彼は、保育園の入り口で甘えた顔を見せて、それでもグッと登園していった。
0 コメント
あなたのコメントは承認後に投稿されます。
返信を残す |
勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
|