さて旅日記の続きだが。
私は自分の英語力を呪うほどに英語ができない。 旅の英会話もままならない。 聞く方もまあダメだけれど、特に喋ることができない。 英語が喋れないダメな日本人の典型で、頭であれこれ考えているうちに会話の波がどんどんと過ぎ去って行ってしまう。 聞こえた英単語に対していちいち、それはそんなふうに使うのか!ふむ!そういえば海外ドラマでも使っていた!とか、しっかりthしてるなあ、とか、この表情は日本人はあまりしないけど外国人はよくするなあ、とか、思考が会話から派生して飛んでしまう。 話す気があるのか、なんて失礼な奴なのだろう。 たぶん、私が音楽ができないひとつの要因はここにある。 流れる時間の中で、リズムによって作られるものについていけないのだ。 上手くやろうと思わなければ良い、のだけれど、きっと、上手くやりたい、恥をかきたくない、というふうに思っている。 詰まるところ、そのものに対する敬意と愛情不足なのだ。 がしかし、それらへの憧れはずっと持ち続けている。 きれいに早くさらさら字を書きたい、という要望を生徒さんからたくさん聞くけれど、それはいきなり英語をペラペラと早口で冗談交じりに話すことだし、ギターのメタルのようなフレーズをいきなりぶわーっと弾くことと似ている。 何だって少しずつ練習、しか方法はないのである。 毎日それに向かっていくこと、それだけで体得は進んでいくのは、何だって同じである。 ちなみにフィリピンは公用語が英語とタガログ語であるが、国策としてタガログ語に傾倒しているらしく、だんだんと英語を話す人が減っているらしい。 なんてもったいないことだろう。 幼い頃に体得することは大人になってからするよりも何百倍もしやすいだろうし、しかも忘れたりすることも少ないだろう。 やれるに越したことはないことは、子どものうちに叩き込んだ方が良い。 英語もそうだし、算数ならインドのように2桁掛け算くらい叩き込んで欲しかった。 私も、滞在4日目ともなって、少しずつ、ほんの少しだけ、英語に慣れてきた。 けれども、タクシーにひとりで乗ったとき、途中で運転手さんがドアの方を向いて、「wrap wrap」と聞こえて、私は「ん?」と思いながら「あ、シートベルト!身体をラップするってことなのか」と自分の脳内を今すぐにでも書き換えても良いですという心でそれを聞いた。 私がシートベルトをしようとすると、「rock rock」と指を指されてやっと気が付いた。 あぁ、分からないとは怖い。 私は自分を疑いすぎなのかもしれない。 後で見ると、シートベルトは運転手さんもしていなかった。 それで、旅日記の続きだが。 渋滞をくぐり抜けて、温泉地ロスバニヨスに近づくと、風は9月の終わり頃の匂いがした。 羽織りものがないとやや寒いくらいである。 晩夏の風は物悲しい。 フィリピンは思っていたより暑くないし湿度もない。 今は、常夏の国と言えど赤道直下ではないから、“冬”なのだ。 最も過ごしやすい季節ということのようだ。 熱気を期待していた私としては物足りなくもないのだけれど、まあ過ごしやすいのは悪いことではない。 ちなみに現地の方曰く、場所にもよるが治安は概ね良くなっているらしい。 昔は花火と一緒に拳銃が発砲され、その流れ弾や落ちてきた玉で何かが壊れたり、人が怪我をしたり死んだりもしていたそうだ。 ロスバニヨスは、東京から見た箱根のようなところで、火山により温泉がたくさん出るのだそうだ。 露店には浮き輪やらがたくさん並んでいる。 この地域にはアミューズメントパークのように、スライダーがいくつもある施設があったり、こじんまりした旅館のように部屋で温泉を楽しめる宿泊施設が点在していて、それぞれ日本人経営、韓国人経営、フィリピン人経営などで趣が異なる。 一番明るくて開放感のある、温泉プールが深さそれぞれで5つほどある場所に泊まることにした。 私の期待はうなぎ登り。 私はかねてより、人のいない、コースロープのない深めのプールで泳いでも泳がなくても良い感じで水と戯れたい!と願っていたのだ。 最近はめっきりプールには行っていないけれども、水は好きだ。 日本のプールは、コースロープがあるか、混んでいるか、とても高いか、どれかだから日本ではこの願いは叶いづらい。 海はいろいろ生物がいるし、岩や海藻などもあるし、波の動きも読めないし、とても怖い。 それに、日焼けをしなくて済む夜に泳げる海があったとしても、もっと怖い。 塩水も辛い。 温泉なのかプールなのか、現地の人々はTシャツのままで浸かっていた。 私はビキニを持っていないし、Tシャツを着ていたわけでもなかったので、フィットネス用の水着を着てゴーグルもした。 お湯はぬるめ、外気は寒め。 水深150cmだから顔しか出せないけれど、手を上げてみたり、腕をお湯から少しでも出すと、ぞわぞわっと寒気が身体を走る。 夜空の星が見える屋外プールで、私は存分に潜ったり、水に体を預けきって浮いたりした。 お湯の方が水のプールよりも進みづらい気がしたのは気のせいだろうか。 午前1時、人はまばらだけれどもいた。 バケーションのフィリピン人や、親子連れもいた。 観光客はあまりいなかった。 監視員はみなうつらうつらアルミの椅子で居眠りをしている。 誰かが何か、危険な行動をすることもなく、穏やかな温泉プール。 心地よい疲労を感じたところで、バスタオルで身体を包んで急いで部屋まで戻る。 ぴゅーと風に吹かれて寒い。 部屋は簡素だし、特にプール以外には何も無いけれど機会があれば私はもう1度ぜひここに来たい。 またこのあたりは、フィリピン大学、東京でいうところの東京大学、も近くに広大な敷地を持っている。 森林学や獣医学が進んでいるそうだ。 夜、車で敷地内を走ってもらうと、森の匂いが満ち満ちと充満していて、学生がちらほら、青春もきゅっと香っている。 地元の人々や学生たちで賑わうお店で、フィリピン料理を食べる。 ホテルのWi-Fiでスマートフォンにて更新。 フィリピン料理やフィリピンの概況はまた続きに。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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