曼珠沙華の有名な巾着田へ。
私は花畑がとても好きだ。 10年ほど前けいこと秩父にシバザクラを観に行ったとき、関東の季節ものの観光地の混雑っぷりに大きな嫌気を感じて、もう行くものかと思ったものだ。 しかしあのときは確か土日であったと思うから、平日水曜日にはさほど混んでいないだろうと高をくくって出かけて行った。 そんなことは全然なかった。 曼珠沙華公園付近の道路は大渋滞、たった2キロほどを車で通過するのに1時間以上もかかる混雑っぷり。 こんなはずではなかった。 都心から2時間以上車を走らせやって来ているのだが、やはりまだまだ関東圏であるこのあたりは季節ものともなればすぐに人ごみが生成されてしまう。 かく言う私もその人ごみの一部であるのだが。 大の都心好きの私であるが、人ごみが好きなわけでは決してない。 都心にいたら都心の人ごみを避ける知恵もつく。 関東圏の観光地は、インターネット上で人気になっているところは出向かない方が良い。 季節ものは特にその限定感ゆえ、より人が群がる原因にもなる。 どこかある程度遠くに出かけたいとなったとき、誰かからの情報かインターネット上の情報を当てにするほかないのだが、名も知れず静かで慎ましやかで面白味があるところだってたくさんあるはずだ。 だってここはトウキョウなのだから。 しかしまあ、曼珠沙華は確かに恐ろしいほどの本数が咲いていて圧巻だった。 私はあの花には毒があるという知識を持っていたが、一面の真っ赤な毒花絨毯だという言葉を充ててしまったのは人ごみに疲れてしまっていたせいもあるのかもしれない。 ところで道中には郊外のたくさんの団地を見た。 団地というのは戦後の人口増に合わせた計画的街づくりで建設されたものらしく、首都圏には大規模団地群がとても多いらしい。 そう思って見てみると「○○団地東」など信号機の名前もたくさんあることに気付く。 最近、団地育ちだという方の話を聞いて、「団地育ち」「団地っ子」という言葉が何やら特別な意味を持っているということを初めて知った。 私にとって「団地育ち」とは「マンション暮らし」くらいの意味合いでしかなかったのだが、どうやら集合住宅という意味での「マンション暮らし」とは一線を画す特殊性があるようだ。 大規模団地は、その団地だけでひとつの街が形成されることもある。 何十棟も同じ建物が立ち並び、順番に番号がふられ、全棟で4万人も5万人も住んでいるところもあるようだ。 病院やショッピングセンターがほぼその団地のためにだけ存在するのはまあ良いが、驚いたのは、小学校や中学校が団地住まいの子どもたちだけで成り立つことも少なくないということだ。 全員がほとんど同じ間取りや景色や近隣環境の中で育っているわけだ。 彼らはともすれば自己紹介の際に「団地育ちです」と言ってしまうくらいアイデンティティに関わる自覚を持っているのだと思う。 そういえばマーシーも東京の団地育ちなのだと思うが、子どもの頃の風景として団地の歌がいくつかある。 私は地方の戸建て生まれ戸建育ちであるが、上京物語を語っても戸建育ちについて自分のアイデンティティの片鱗を見出すことはほとんどない。 今回ある大規模な、最寄駅からバスで30~40分かかるという郊外の団地群の場所を車で通過したのだが、夜だったからという理由も大きいと思うが、今まで感じたことのない怖さに似た気持ちを抱いた。 まるでジオラマの中に小さくなった自分が取り込まれてしまったような気分。 コンビニがあってファミレスがあってガソリンスタンドがあってカラオケがあるようなよくある日本の地方都市とは全然違う。 ちなみに私はこの何処にでもある地方都市感がとても苦手ではあるが。 団地はそもそも都市開発として計画的に街を設計されているのだから、昔ながらの土着の居酒屋やクリーニング店などは存在しない。 画一化された林立する住宅群と、取ってはめたようなバス待合所、整然とし過ぎている並木道、完璧に舗装された道路。 個々の力が合わさってできる醸成するような文化的な何かを感じることが難しいような。 都市計画という予め大きな力が働いていることは便利であり、先進的な仕組みを享受できる一方で、閉鎖的環境が生まれざるを得ない側面があるだろうと思う。 団地でなくともどの地域にもあると思うが、大きな社会の中でまた尚生まれる小さな社会。 そこでしか通用しない暗黙の規範も多々生まれ得る。 それは誰かにとって居心地が良かったり悪かったりするのはどこに住んでいても同じことだろうが、団地の特殊性についてはもう少し知ってみたい気もする。 そんなことを思った小旅行。 どこに行っても行けそうなサウナを検索して旅をする。 全国各地津々浦々、サウナくらいはあるものなので、どこに行くのも信頼性の比較的高い楽しみがひとつ追加されるようなものだ。 東京浴場組合から銭湯お遍路26か所達成の認定証が届いた。 ただ今35か所のスタンプ数。 88か所まではまだまだ。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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