遠出をする前は、できる限り掃除と洗濯をする。
トイレとお風呂を磨いて、雑巾で床を二度拭いて、シーツやクッションカバーなどを剥がして洗う。 ゴミをまとめて全部出す。 出かけて何かしら疲れて帰ってきた自分を、安堵の気持ちで迎えてあげたい。 お盆とは何をする日のことを言うのだろうか。 実家に帰らなくたって、お墓参りに行かなくたって、私には特段文句を言ってくる人はいない。 昔のしきたりに、私は本当に何も思わないし、今や家族の誰もがそれを押しつけてくるなんてこともない。 東京は明らかに空いていて、真夏の温度が少し下がったように清々しい気さえする。 けれど私は今日の午後、一泊だけ、いや半泊ほど、実家に帰る。 親孝行や祖父母孝行なんてことでもない。 私にだってほんのちょっとは、たまには、家族に会いたいなんて気持ちがあるのだ、と思う。 「あんたが帰ってくる時間はいないから、あっちの家の方に行っててね」と、私の都合は一切加味してくれないのはいつものことで。 私はそのことにいつものように少しだけ冷たく胸がきゅっとなる。 今の今まで仕事をして、明日の昼には友人に会って、そのまま東京に戻り、夜は仕事だ。 実家では、おばさんは仕事が忙しい、ということになっている。 いや本当に忙しいのである。 クーラーの効いていないところでかき氷が食べたい。 気分は、いちご。 立派なやつでなくていい、ふわふわのやつでなくていい。 いちごの果肉なんて要らない、今は。 食紅、という感じの、ザクザクした氷の、昔「あきさ」で食べたような。 今、新幹線ひかりを、たくさんのスーツケースがごろごろしていくのを横目に、スマートフォンで文字を打ちながら待っている。 「そんなに列車に近寄ったら列車が発車できません」と、いつになく怒りモードのアナウンスが連発されている。
0 コメント
あなたのコメントは承認後に投稿されます。
返信を残す |
勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
|