確定申告を提出しに行ったのは一週間ほど前である。
提出のみ受け付けの臨時ブースには、ディズニーランドなどで見かけるベルトで区切られたぐるぐると長い行列ができていた。 ディズニーランドと違うのは、誰もおしゃべりをしていないこと、楽しみな雰囲気がないこと。 そんな行列の中、久しぶりに迷走神経が迷走した。 所謂貧血というやつなのだと思う。 妊娠如何ではおそらくなくて、私に起こりやすい身体の不調である。 気分が悪くなってきて動悸がして息苦しく、目の前に黄色い靄がかかってチカチカとしてくる、冷や汗をかいて意識が朦朧。 高校生の頃から年1回ほどの頻度で起きるのであるが、これの対処法というのはしゃがむか横たわるしかない。 まずいまずいと考えているうちに意識を失ってしまうかもしれないので、朦朧とする頭で色々と考える。 へなへなと座りこんで後ろの列の人に「誰か係の人を読んでください」と頼むか、その際大きめのお腹を見せて「妊娠しています・・・」とか言った方が良いのか、あるいはあと10分ほど持ち堪えて受付の人に書類を渡すや否や「気分が悪いので休ませてください」と言うか。 もう30分ほどもこの行列に並んでいて、提出期限は明日までだから何としても今日出したい。 もたれかかるには頼りなさすぎるベルトに寄りかかって、もうしゃがもうもうしゃがもうと思いながら何とか呼吸をしながら列は進んでいった。 こんなときでも腹の子は心配だった。 腹の子は私とは明確に異なる人だけれど、今は私なしには生きられない存在である。 私だけなら、どうなっても良いとまでは言わないけれど、どうにかなるしどうにかするが、腹の子まで苦しいのはかわいそうである。 とりあえずとにかく酸素は届けておこうと、なるべく深い呼吸を心がけた。 やっとの思いで受付までこぎ着けた時には随分と目の前はちかちかしていた。 いくつか確認の質問を受けたが、頷くだけで精一杯。 後ろからの列も迫っていたし、何とかトイレまでは行けそうだと判断し、周りから見たら何事も無かったかのように提出を終えて壁伝いに部屋を出た。 きっと顔面蒼白だっただろう。 トイレでしばし休憩していたら、視界も心拍も平常に戻ってきた。 行きにそうしたように帰りも歩こうかと思っていたが、電車に乗ることにする。 タクシーも考えたが、タクシーを拾うまでの道のりで駅に着きそうだった。 これまでこの症状が起きたとき、一度その事から回復してしまった後は、後遺症でぼんやりしているが再度症状が戻ってきたことはない。 事なきを得て帰宅。 かえるくんはその夜、ぼこんぽこぽことよく動いていた。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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