そうこうしているうちに年が明けた。
喪中なのでおめでとうございますを控えています、と言いながらすでにこの時点で言ってしまっている。 本年もどうぞどうぞよろしくお願いいたします。 そうこうしているうちに、というのは、久しぶりに、2年か3年ぶりにインフルエンザを罹患した。 漸く地に戻ってきたところだ。 仕事のキャンセルを相次いでしなければならなかったことが心苦しい。 これまで人の風邪がうつった経験が自覚する上ではなかったのだが、今回は明らかに正月に5歳の姪からインフルエンザウイルスをもらったのだと思う。 姪は今の今まで元気に飛び回って遊んでいたかと思っていたら、いとこにババ抜きをやろうと誘われても「苦手だからやらない」と断り始めたところからそれは始まっていた。 間もなくして太ももが痛いとぐずり始め、お母さんとおばあちゃんの間に入ってさらに喚き始めた。 ばたばたと喚きながら、おばあちゃんは「あら、熱くなってきた」と孫を触って言う。 いもうとは娘を触って、「8度ちょうど!」という診断を下していた。 触るだけでだいたい正しい体温が分かるらしく、体温計など要らないと母親のスキルを見せつけていた。 私も、サウナ室と水風呂の温度ならだいたいの体感で当てられる自信があるけれど、まあそれと似たようなスキルだろう。 要はデータベースを溜めて練習を重ねることである。 姪がぐずり始めて発熱した日の夕方ころから、私も何かよからぬものをキャッチしたなという実感が喉にあった。 後に咳が出るようになり、帰省の新幹線で東京に帰りつくころにはずどんと身体が重たくだるくなっていた。 帰宅して検温すると37.8度。 妊婦の私の現在の平熱が37.0ほどなので大したことはない、早く寝ようと一筆だけしたためてベッドに入った。 が、寒くて足が温まらなくて、身の置き所が無くて、眠れない。 ようやく眠りについたかと思えば今度は身体がホッカイロが絶好調になったような感じで暑くて眠れない。 再び検温すると38.7度。 インフルエンザだな、と悟る。 正月の夜なので普通の病院はどこもやっていない。 以前同じような状態になったとき、大久保病院の救急外来に行ったことを思い出して、またいもうとが妊娠中にインフルエンザになってタミフルを服用したら瞬く間に治った話を思い出して、頭痛と悪寒と激しい気怠さの身体を携えてタクシーで大久保病院に向かった。 こういうとき、救急外来という手だてがあるという過去実績はとてもありがたいものである。 夜の歌舞伎町の外れの大久保病院の裏口、救急のインターホンを鳴らす。 事情を説明して最後に妊娠していることを伝えて、暫くして看護師さんが出てきた。 「うちでは産科も婦人科もなくて、妊婦さんにお薬を出すのは不安なのでできれば産科か婦人科のある病院に行った方が良いかと思います。#7119で病院を案内してもらってください。寒い中ごめんなさいね」と断られてしまった。 まあ確かに、妊婦の取り扱いはあまりしたくないのは分かるし、30代女性×胎児×インフルエンザとなると30代女性×インフルエンザよりも俄然パラメータが増えて判断しづらいことも分かるが、妊婦がインフルエンザにかかることなど頻繁にあるだろうからそのあたりのガイドラインくらいはあっても良さそうである。 仕方なしに#7119に電話し、近くの総合病院の救急外来へまたタクシーで移動する。 ふらふらと受付にたどり着くと、なんと3時間待ちと書かれている。 しかしながら、救急車で運ばれるような危篤状態でもないので順番を早めてくださいとも言えない。 悪寒高まる中、救急外来のベンチでじっとしているより他ない。 マスクをしていても土色の顔色をのぞかせる人がたくさん順番を待っていた。 点滴をつないでいる人もいれば車いすに乗っている人もいた。 脱臼したらしき小さな子どももいた。 代わる代わるお医者さんや看護師さんが出てきて病状や今後の流れを説明していく。 このまま入院をする人もいるらしい。 程なくして感じの良い看護師さんが私のもとにやってきて、インフルエンザの検査だけ先にしますね、と鼻に検査の綿棒を突っ込んでいった。 30、40分して陽性の結果が出たのだが、やはり初診の妊婦に薬を処方するのは色々な手続きがあるらしく、また30、40分待たされた。 そしていもうとに聞いていた通り、タミフルが無事に処方された。 ちなみに現在のインフルエンザ薬は吸引薬のイナビルが主流らしい。 タミフルは少し古いお薬ですが、妊婦さんにも安心して使っていただけますと薬剤師さんから説明があった。 であれば、もう少し早く出してほしい。 帰りに震えながらスーパーに寄って、またタクシーで帰宅する。 少し食べて、期待と祈りを寄せてタミフルを飲む。 半日では聞かなかったが丸一日経過して、やっと病み上がりな感じがした。 病み上がり、というよりは、闇上がり、という感じである。 霧が晴れて、一皮むけた心持ち。 ちなみに、これはほとんど同じ症状を発症した夫と行動を共にしている。 なぜか夫のインフルエンザ検査は陰性だったのだが。 「夫」という言葉を使用することも、病院でたくさん新姓を名乗ったのも、とても新鮮であった。 また病院探しもタクシー拾いも自分でやったように書いてしまったが全部夫がやってくれていた。 ひとりでもできることだが、ふたりいると心強い。 人に結婚した人のことを、何と言うかまだ決めかねている。 「夫」「旦那」「主人」「彼」「○○(名前)さん」「うちの人」「家長」。 子どもが生まれても「お父さん」や「パパ」とは呼びたくない。 暫くの間、家計を支えてもらう立場として「家長」と呼びたいところだが、人には伝わりにくいだろう。 それにしても、私は滅多に風邪をひかないけれど、あぁ健康でありたい、と思った新春のはじまり。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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