今夏初めてのソルダムをいただく。
ソルダムはプラムの種類で、皮は茶けた緑色、果肉が真っ赤な瑞々しい果実である。 齧ると赤い果汁が滴る、太陽をもぎ取って食べているような、元気そのものを食べているような果実。 プラムのように、熟れ具合によって果肉の硬さはガリガリと硬いものからジュクジュクに形をとどめるのが難しいものまで様々で、熟れれば熟れるほど甘みは増していく。 どの時点が一番美味しいかと言われれば、その中間の良きところ、としか言いようがない。 未熟と完熟の中間、硬すぎず柔らかすぎず、酸っぱすぎず甘すぎず。 たぶんそれは、個体差もあるだろうし、ごく狭い点のような範囲しか存在しないのではないだろうか。 ソルダムは夏の始まり、梅雨の今の季節に売り出されるようになり、夏本番という時期にはほとんど姿を消してしまう旬の短い果物だ。 今年は的を射抜くようなソルダムをいくつ食べられるだろうか。 今夏初のソルダムは、やや小ぶりで少し食べ頃を過ぎていたので60点といったところであった。 ところで、よくドラマなどの入院シーンで患者の母や妻などが病室でリンゴを剥いていることがあると思うが、あれはなぜこぞってリンゴなのだろうか。 「リンゴが赤くなると医者の顔は青くなる」というような健康イメージがあるのかもしれないが、リンゴ以外にも同様のカロリーや果糖やビタミンを含んでいる果物はあるだろう。 そして、病室にナイフを持ち込むことは良いことだとも思えないし、まな板や皿やフォークなども一緒に準備しないといけないので大層手間ではないのだろうか。 ブドウならざっと水洗いするだけで手で食べられるし、バナナだったら洗う必要も皿も必要ない。 患者が無類のリンゴ好きで、望んだのであれば話は別だけれども。 またドラマなど映像では、梨ではなくリンゴの赤さや青さの色味が必要なのかもしれないし、メロンやスイカのように切り分けるのに力を要してそちらに注意を向けなければならないものよりも、手に収まってほとんど無意識に皮むきできるくらいのリンゴがちょうど良いのかもしれない。 シーンとしては、リンゴを患者に食べさせるのではなく、リンゴを剥いている時間の会話を撮りたいということだろう。 実際、剥いたそのリンゴを食べているところまでのシーンをあまり観たことがない気がする。 ただ、少なくとも私は、実際の病室ではリンゴを剥いて会話をしているのを見かけたことはない。 各方面、主に親族からまだかまだかという内容の連絡が入る。 誰より一番私が待ちくたびれていると思うのだけれど、かえるくんにはその焦りが私を通して伝わってしまう気がして重たくて切ない責任感をどうにか払拭したいと思っている。 かえるくんは悪くない、誰も、私も、悪くない。 退院時に着せるベビードレスは要らないような気がしているのだが、何せタクシーに乗ってしまうと病院から家まで2分ほどなのだ、結局けいこが買っていくと言っている。 買ってくれるならお願いしようではないか。 しかし私はそのベビードレスを記念だからと何十年もしまっておくような人物ではないので、そのあたりは予めご了承いただきたい。 一か月後のお宮参りには行くのか、とも聞かれる。 一か月後にお宮参りに行くのが一般通例なのか、行ってもいいし、行かなくても良い。 バスタオルや肌着はどんなものが何枚あるのか、とも聞かれた。 一応最低限のものは用意したつもりではあるのだが、気温的に寒いということもないし、その気になればすぐに街に出て買うか、通販の翌日配達を利用すれば良い、と考えている。 実際のところ、何せ初めてのことだから私たちは何も分かっていない。 さまざまな判断を私たち親がしていかなければならないが、今は先輩方の言うがままに従っておくのもひとつの手なのかもしれない。 おそらく私たちはやや社会性に乏しい面がある。 社会性というものを鵜呑みに良しとしているわけでないない、という自覚的無自覚的な意思表示がそうさせてしまっているのだろうけれど、子育てにおいてはどのようにしていけば良いのかはさっぱり未知である。 結局のところ、けいこの言うように「子どもは思い通りにならない」のだろうし、全ては「バランス」という言葉に尽きてしまう。 「バランス」という言葉は非常に便利で、マジックワードであり思考停止地点である。 そして「バランス」というのはほんの些細なことで均衡を崩してしまうし、そもそも留まっているものでもなければ日々刻々と揺蕩い変化しているものである。 それでも一時いっときの「バランス」を噛み砕いて選び取っていく必要がある。 私たちは親として初心者なのは当然のことなのであるが、ほんの次の瞬間の未来に対して常に初心者であることを忘れてはならない。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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