15時過ぎ、新青森駅に到着。
というところから回想しようと思ったが、記憶が新しくて柔らかいものから書かないと、おしなべて古く固まってしまうの、昨日今日を先に記すことにする。 午前11時過ぎに函館港に到着。 フェリーは新幹線より安かったというのもあるけれど、旅情として船に乗りたかった。 終始曇り空で、途中うわんうわんとかなり揺れたけれど船酔することもなくよく眠れた。 いやまあ、眠ってしまったら旅情も何もないのだが、船に乗りたかった願望は十分に満たされた。 津軽海峡フェリーは、とてもきれいで設備も整って申し分なかったことも挙げておく。 レンタカーを借りてイオンに行って飲み物や持ってこなかったメイク落としなどを調達したりなど。 青森もそうだが、物価が東京よりも全般的に1割ほど安い感じである。 トップバリューの水2リットルが58円とは。 やはり、東京のものよりも野菜の色が濃くてぱつんぱつんに水分を抱えている感じで、化粧をしていない田舎くさいが発育が健やかなすっぴん美人、みたいな感じだ。 青森の回想録が書ければ出てくると思うが、道の駅で買ったミニトマトはこの旅の中でも上位に入る美味しさだった。 土臭くて太陽風味のトマト味。 野菜不足も手伝ってミニトマトを夜中に貪り食った。 イオンを出て、大沼公園というところに向かう。 私は建物や遺跡や博物館などよりも、自然が雄大なところに行きたい傾向が強い。 函館を10分ほど郊外に向かって走ると既に「ほっかいどー!」と口にしてしまう感じの真っ直ぐな道となった。 まっすぐな道でさみしい、とはまたも山頭火の句であるが、カラッと明るくてだだっ広い北海道の一本道は、精神が清潔な野球少年のように爽やかで、一抹の淋しさをポケットに持っているかもしれないけれど概ね凛としていてとても気持ちが良いものだ。 曇り空だった天気は回復傾向で、青空も広がり始める。 北海道は今8月が東京の5月くらいの爽やかさで、緑も濃くなり始めて一年の中で最も美しいきらきらと輝く時期である。 私は過去に札幌と小樽と富良野に言ったことがあるが、函館は初めて。 北海道という括りで良いと思うが、本州の雰囲気とは一線を画する。 青森は山に囲まれていると言った感じなのだが、北海道は地球に抱かれている、と言いたくなる。 函館で言えば海もすぐ側だし山も連なっているのだが、大陸の雄大さを兼ね備えている。 茨城の水戸にも少しだけ似ていて、水戸は海が離れていて平野だからなのだと思うが、あらゆる音の反響が少ないのである。 函館は海は近いが、北海道のそのスケールが逐一大きいため海辺でも大陸の感じがするのであろう。 私は基本的に5月頃都内近郊や本州のどこかに出かけたりすると、それらどの場所でもほとんど好きになってしまうくらい、5月の新緑が煌めいている時期が好きなのだが、北海道の雄大さを以てして遅れた初夏の陽気の大沼公園を好きにならないはずがない。 まして天気は雲がほとんど取れて抜群のスカイブルーになっているわけなのだから、精神的恍惚状態にもならざるを得ない。 大沼公園は、公園といっても大沼小沼という沼のような湖のような巨大な水たまりに、周りに少しの売店や食事処や小さな遊覧船がある。 今はどこに行くにも便利なもので、Googleで検索をかければ何を見るべきか、何が美味しいのか、精査されたものを知ることができる。 いっそ通信を断ち切って自力で探すのも良いとは思うのだが、そんなに長い間滞在する訳では無いし、地図やガイドブックに載っている店よりも何らか理由があって検索上位を勝ち得た人気の店情報を短時間で効率よく得られるのがインターネットの良さなので、ここはGoogleの力を存分に使わせていただく。 ちなみにインターネットよりも信頼性が高いのは、実際の知り合いからの口コミであるので、旅前にはことある事に青森や函館のことを聞いていた。 「大沼公園」と入力すると、変換予測で「大沼公園 だんご」と出てくる。 お昼を食べていなかったこともあり、だんごを食べてみることにする。 インターネットの情報によると大絶賛の評価がたくさん出てくる。 店は実際にやや混雑していて、だんごは次々と売れていた。 あんことみたらし、黒胡麻とみたらし、の2種類のセットがあって、あんことみたらしにすることにした。 あとは、懐かしい瓶牛乳もあったので、それも一緒に。 串団子ではなく、白玉団子のような小さめの俵型のだんごが各20個ずつほど入っていて、二色ご飯のようにその上にびっちりとあんことみたらしがかかっている。 お餅のように、耳たぶのように、柔らかいだんごである。 これがまたすこぶる美味かった。 ネットで話題、というのは侮れない。 しっかり米感のあるだんごも好きだが、もちもちと柔らかいのも悪くない、良い。 塩気がちょうど良く、優しさの妙が感じられる上品な仕立て。 あんこの方の塩味が感じられるところが私としてはかなり気に入った。 ぱくぱくといただく。 「必ずその日中にお召し上がりください」となっているので残念ながらお土産には出来ない。 しかしあまりに気に入ったものだから、黒胡麻とみたらしを夜にでも食べようと思ったけれど、案の定食べずに持ち越して今日の午後にもう一度大沼公園に寄ってそれを食べた。 確かにだんごはぐにっと固くなってしまっていた。 余談だが、黒胡麻だんごの上にかかっていた黒胡麻ペーストは舗装中のアスファルトのように黒々としていて、甘いアスファルトを食べているみたいだと思った。 モンゴウイカを食べたときには消しゴムの食感みたいだとか、香り高い中トロを食べたときには花の香りがする石鹸を食べているみたいだとか、私の比喩は人からしたら食欲を削ぐようなものが登場するのだが、なんだか私はこういった表現が自分的に言い得て妙であると思ったとき、結構満足感がある。 さて大沼公園を少し歩いて昭和初期に噴火して山のてっぺんが取れた形の駒ケ岳を拝み、そこから3,40分車を走らせて鹿部というところの宿へ向かう。 家々がある小さな集落をいくつか越え、ホテルに到着。 決め手は、辺境な土地のサウナがあるホテル。 最寄り駅まで歩いて20分ほど、コンビニまで車で10分弱、ゴルフ場は目の前に。 ここ最近外部の手が大きく加わったのだろうと思われる感じのホテルだ。 ホテルのサイトや予約システムなどもとても現代的でしっかりしているという印象。 ホテル側のコストパフォーマンスがよく練られている。 抜かりなく細かな節約をしつつ、ホテルの部屋や食事などのレベルは金額に見合った良質を目指していることが窺える。 建物自体は古く、壁紙は茶色く、ところどころ浮き上がっている。 エントランスや食事処、お風呂などは北海道サイズで広々。 しかしなんと言ってもやはりロケーションは最高である。 部屋の窓からはゴルフ場の緑とその奥には海原、そして大きく丸い水平線。 エレベーターホールからは駒ケ岳が望め、その前には樹海が広がっている。 なんだか少しオーストラリアのパースに雰囲気が似ている。 屋上に上がるとそれらがさらにレベルアップしたパノラマビューを見ることができる。 吹いている風は冷たくて、長居はできなかったけれどなんとまあ気持ちの良いことか。 この日はとても晴れていた。 あとでホテルのサウナに入ったときの地元のおばちゃん達の話によると、こんなにも駒ケ岳の輪郭がくっきりと大きく見えることはとても珍しいそうだ。 前日に雨が降り、空気が洗われて澄んでいると駒ケ岳は大きく見えるのだと言う。 そして、林の中の露天風呂は、なんとまあ気持ちの良いことか。 森の精霊様の密やかな鼻歌が聞こえてきそうである。 私はこれまで風呂全般が苦手だった。 服を脱ぎ着するのも、身体や髪が濡れるのもドライヤーを当てるのもひどく面倒に思っていた。 だから温泉宿というものにさっぱり興味がなかったのだが、サウナによるととのいを知ったおかげで風呂施設が心から楽しめるようになった。 まあ今でも風呂に浸かること自体はさほど好きではないのだが、風呂施設があるということに上級の悦びと楽しみを感じ、そのためなら服も脱げるし髪が濡れても良い、ドライヤーは別に当てなくても良い。 サウナに感謝、だ。 風呂施設を好きになったことは出不精で面倒臭がりの私の行動の多大な原動力となっている。 日本全国津々浦々、風呂施設は沢山あるわけなので、私は旅が好きだと言う日が来るのかもしれない。 大げさではなく、サウナは私の人生に多くの彩りをもたらしており、この後もそうであろうことは大変に悦ばしい。 夜ごはんを食べて、お酒を飲んだらかなり酔っ払ってしまい、コンタクトレンズを外す際に片方をケースに入れ損なってしまっていた。 朝パリパリになったコンタクトレンズはもうどうしようもなく、予備は持って来なかったのでここからは眼鏡の旅になってしまった。 リアルタイムでは、函館空港、搭乗5分前。 成田着の格安便であるが、台風の影響で羽田空港か中部空港への着陸になる可能性があると言う。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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