用があって外出したらその用に振られてしまったのでしばし散歩をすることにした。
この前食べたタルトタタンの生温かさが美味しくて、タルトタタンを食べないにしても、あのカフェに足が向いた。 いつも句会をしているカフェまでのろのろと歩いて行く。 のろのろと、というのは本意ではないのだが、腰が痛いのでスタスタとスピードを上げて歩けないのである。 ちなみに今日のトータル歩数は9000歩余りだったが、まあこのくらいが限界である。 お腹が張ってくるし、腰は動かなくなってくる。 本屋で本を買ってカフェで本でも読むことにしようと思い立つ。 私は皆からやや驚かれるが本当に読書が苦手である。 いろんな有名な小説のことなども、恥ずかしいほどにほとんどのことを知らない。 でも言葉は好きだし、文章も好きである、一応。 だから本を読みたくて読めるようになりたいと常々思ってはいる。 カフェで読書、というのは憧れである。 昼下がりに食後のコーヒーに入ったカフェで、持参した本が面白くて読み耽り、気が付いたら夕方だった、なんてことが起こってほしいものである。 読み耽る、なんて体験は自覚的には一度もないかもしれない。 行きしなに昔ながらの古い本屋さんがあったので、ふらりと入ってみる。 知っている作家の小説にするか、小難しそうな時代小説にするか、銭湯雑誌にするか、料理本にするか、エッセイにするか、絵本にするか、この際タイトルのみを見て選んでみるか。 中島京子さんという作家の「妻が椎茸だったころ」というタイトルに惹かれたけれど、今日のところはカフェ読書超初心者として滞在時間で読み切れるものが良いだろう。 あれこれいろいろ物色して、結局漫画になってしまったが、「まんがで読破 旧約聖書」という脈絡のない本にすることにした。 まんがで読破 シリーズは「般若心経」や「相対性理論」や「菜根譚」などいろいろあったが、何となく「旧約聖書」が目に留まった。 哲学の本はほんの少し何冊か読み齧ったことがあるが、仏教以外の宗教の本はあまり経験がない。 日々のいろんな考え事をするにはおそらく広く遍くもう少し素養が要るというか、所謂勉強的要素があった方がスムーズな考え事ができるのではないかと思っている。 しかしながら私はほとんどすべての宗教も歴史にもとても疎く無知なので、ものすごく易しいところからしか入れない。 「旧約聖書」は中でも比較的分厚い本ではあったけれど、漫画ならばいけるだろう。 ちなみに、私は漫画であれば日々読書をしているかと言われればそんなこともない。 活字のみの文章よりも若干食指が動くというくらいのものだ。 本を本屋で買うなんて何年振りだろうと、喜び勇んで本屋からカフェに向かったのだが、私はこの本をこの時点で読み切る自信は毛頭なかった。 きっと読む気がしないか、眠くなるか、スマートフォンを見てしまうか、結局10ページほどしか読んでいない本を持ち帰って積読本の高さを増すことになるのだろうと、そんな気に満ち満ちていた。 日曜の夕方、カフェは混んでいた。 あんずのタルトとアップルティーを注文して、カフェの目的のひとつを達成する。 喜び勇んで買った漫画本を取り出して、開いてみる。 カタカナの名前が数多く出てくるので人物を把握するところで既に心が折れそうになっていたが、名前を覚えることは諦めて詠み進めることにした。 隣りとの席が近いので、会話が丸聞こえであることが気になった。 途中眠くなってカタカナの名前たちが頭に蠢いていた。 座りっぱなしの腰も痛くて、何度も何度も姿勢を探っていた。 1時間強の時間をかけて私は一冊の漫画本の最終ページまで到達した。 読み切ったのだ。 なんと久しぶり。 肝心の内容がどこまで頭に入って咀嚼できたのかは怪しいところが多々あるが、本を読み切ること自体が久しぶりであった。 内容も、私が知らないことだらけなのが良かったのか、上澄みの上澄みをぺろりと舐める程度の楽しみは十分にあった。 そりゃあ聖書なのだから当然といえば当然なのかもしれないが。 家で寝っころがってしまっては毛頭本など読めないので、カフェのような人目があって姿勢をある程度保たなければならないところで本を読めば良いのかもしれない。 ということが、本日最大の収穫であった。 今日のカフェは他人の会話が気になったので、むしろファミリーレストランくらいに雑音がもわんと混じり合うところの方が良さそうだ。 タリーズやドトールといったコーヒーチェーンでも良いのかもしれない。 美味しいタルトは食べられないけれど。 調べてみると家の近くには大きな図書館があるようで、そこでも良いのかもしれない。 読書の習慣を、人生で初めて、なんとか付けてみたいものである。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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