ガソリンみたいな味がするね、と一個900円近くもするとろりと濃厚なチョコレートケーキを一口食べていもうとは言った。
どれどれ、ほんと、ガソリンスタンドでケーキ食べているみたいだね、と私。 ほんと変わった味、とけいこ。 ガソリンは誰も食べたことがないと思うけれども。 そしてガソリン味のチョコレートケーキが美味しくないということでもないのだけれど。 複雑な味だね、やっぱりガソリンガソリン、と言っている脇で、いもうとの旦那さんがそれをひと口つつく。 あ、これトリュフだね。 さすがソムリエの資格保有者。 私たちはトリュフを食べたことがなかっただろうか。 それともチョコレートと相俟ってトリュフがガソリン風味を纏ってしまって、それが私たちのトリュフの記憶を凌駕してしまっていたのだろうか。 洋酒がきいていたので、アルコールエタノールガソリンと連想してしまったのだろうか。 しかしながら、こういうことは楽しい。 ガソリン風味のチョコレートケーキが好みということではなくて、不意の発見が。 半年ほど前、松山で飲んだ栗焼酎を汲んできた湧水で割ったら、嘘のようにまるで水のような透明な味になってしまったこともそうだ。 ふかの湯引きが浮き輪を食べているみたいだったことも。 安心安定の味はそれはそれでとっても良くて、その時にお腹の具合にあった何かもとっても良くて。 美味しいということはとてもとても素晴らしいことだけれど、しかし、あの店に行けば、あれを食べれば、いつだってオールハッピー、ということはない。 そんな中で、不意に訪れる、「!!?」のような現象がとっても好きなのである。 当然「!!?」は最初の一回だけなので、ガソリン風味のチョコレートケーキをもう一回買うかと言ったら買わないかもしれない。 あそこのチョコレートケーキ、ガソリン風味だから食べてみなよ、などと人に勧める話でもない。 ただただ、なんだかそういうのは楽しいのである。 もうすぐけいこの誕生日だからと、ヒカリエの地下でばらばらとケーキを買った。 ピスタチオやらフェンネルやらクミンやらパッションフルーツやらが使われていて、どれもが趣向を凝らした複雑さがあった。 個人的な好みとして、以前確か蔵前の方で食べた、楚々としてそれでいてみっちりしたガトーショコラや、地元のケーキ屋さんのまるごと桃のタルトの方が好きだ。 料理には何であれ、優しくされたい。 いや、でも、「!!?」はいつだって欲しい。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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