アイロンとアイロンの熱で紙を張り付けられる裏打ち用紙を買った。
作品を現物として飾る場合、やっぱり書いたそのままの皺しわ状態よりも裏打ちした方が見栄えが良いし、額などに入れれば俄然見栄えも上がる。 普段作品を写真に撮って保存する場合、画像加工の力をひょいと借りてしまって、ともすれば現物よりもごく簡単に結構良い感じになってしまう。 現物をそのまま生で見たほうが良いものももちろんあるけれど、画像加工に慣れ過ぎてしまうのも恐ろしいものだなと感じている。 葉書に書いたり、木の板に書いたり、画板に書いたり、裏打ちをしなくても良いものに書いたりもするけれど、やっぱり書道用紙に書いたものは書道用紙にしか出せない味わいがあるので仕方がない。 今まで裏打ちを3度ほど自分でやったことがあるが、いずれも水糊を刷毛で塗って、という古典的なやり方をしてきた。 ライフワークのように頻繁にするのであれば上手くもなるだろうが、ごくたまにやるくらいでは勘所を掴めない。 毎度インターネットでそのやり方を検索することになる。 だから今回は、簡易的にアイロンでできる裏打ち用紙を試してみることにした。 私は日常的にアイロンを使うような服を着ないし、ハンカチにもアイロンをかけるなどということはさっぱりないので、家にはアイロンがなかった。 いや、数年前までは一応なぜだか持っていたのだけれど、引っ越しの時に要らないと判断して捨ててきたのだ。 amazonで適当に探した安価なコンパクトアイロンは、本当にコンパクトでびっくりした。 手のひらサイズ、ちょうどモルモットくらいの、そんな小ぶりのアイロン。 電源スイッチも温度調節機能もない。 コードを装着すれば電気が入る。 温度を下げたい場合は、当て布で対処すると説明書にあった。 私の自作句の書が欲しいとご依頼くださった方がいて、その作品を丁寧に丁寧にアイロンがけしていく。 私的に、同じ作品は本当にもう二度と書けないので、失敗は許されない。 中くらいの温度でと書いてあったので、当て布をしながらやると糊が全然溶けておらず張り付かなかったので、ゆっくりと直にアイロンを裏打ち用紙に当てていく。 水糊で裏打ちする古いやり方は、作品を一度霧吹きでびたびたに濡らして、その上水気のある糊を塗るわけなので、貼り付け作業が終わっても乾くまでどのように仕上がったのかは分からない。 でもこの裏打ち用紙は、少し霧吹きで湿らしはするけれど、アイロンを当て終わった時点でほとんど出来上がっている。 便利だ便利だと耳にしたことはあるけれど、確かに便利だ。 半紙がピンとなって、分厚くなって、ちょっと立派になる。 それを、別途仕入れた簡易的な額に納める。 最近手紙の代筆の仕事もいくつかやっていて、改めて字を売っているのだなあと思ったりする。 私が竹内恵美子であるという乖離感はだいぶ減ったとは言え、未だ多少あるのと同様に、今の私の仕事を私自身がこなしながら、そんな現実をやや不思議に感じているのである。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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