締め切りを過ぎて過ぎて、無理やりにひねり出した俳句で句会に参加。
もっと満を持して参加したいのだが、最近あまり句作に向かないのはどうしたものか。 夏の昼仏壇跡の黒の奥 男湯へパパと呼ぶ声夏の夕 宵闇に夢という意味調べたる 台風をぎゃふんと言わす球児かな この夏の伽藍堂なる仏間かな 夏の陽の血は滴るやソルダム 自分に季節感がないということに気付き、またそれを私は精神的に重んじていないようなので「季語」や「季節感」やそれらに対する共感を狙うことが良しとされる俳句の世界に正対できないのかもしれない。 しかしながら、そのスタンスでも私にとって言葉は面白いし、五七五という相当にキツい制約のフレームも面白い。 だから辞めようなどとは思っていないのだけど。 なかなか筋トレのように日々句作をすることはおろか、締切にも間に合わず迷惑をかけることにもなってしまっている。 どうしたものか。 さて、やはり実体験があると創作物は瑞々しさを増すわけだが、私にとって今年の4月に祖父母が死んだのは比較的大きな心の動きだったのだと思う。 というよりは、人の死にまつわる人の動きが興味深いと言った方が良いのかもしれない。 いよいよ住人がひとりもいなくなった実家の行く末を四十九日の法要の際に少し話し合っただけで、現状話が進んでいるのかどうかは、東京に出たきりの中間子にはあまり報告ごとがないのかそれとも単純に話が進んでないのかは知らないが、おそらく後者だと思うが、とりあえず祖父母が大切にしてきた仏壇は撤去するということになった。 代わりに兄の新居に仏間を設けているので、そこに竹内家の仏壇を新調するということらしい。 6月の時点で仏間にはぽっかりと、不気味で深い仏壇の跡があって、「夏の昼仏壇跡の黒の奥」というのを呼んだものである。 伽藍堂の句もついでに作った。 仏間はただでさえ薄暗いのに、突如大きな四角の真っ黒い奥行きが生じたことに私はやや驚きを感じていた。 仏壇を移動させれば仏壇の大きさの空間がそこにあることは当然であり、それはただの空間にすぎないのだが、いかにも自ら意味を持たせてしまいそうな黒い空洞だった。 これまで存在し続けたものが無くなって、代わりに現れた四角い闇。 酷く埃っぽいその闇に一歩踏み入れる理由など何もないのだが、私は理由があったとしてそこに踏み入れることがあるとすると妙な高鳴りを起こしてしまうかもしれないなと思った。 「四角」「立方体」「黒い柱」「奥行き」「深淵」「ブラックホール」「闇き(くらき)」「黒枠」「遺影」「空洞」「洞窟」「虚無」「存在」・・・俳句を作るとき、描きたい意眼^ジがある場合にはその界隈の言葉をわっと出していく。 季語をあれにしようかこれにしようか、繋がりそうな言葉を引っ付けて入れ替えて。 単純な意味で、コントラストは強い方が印象的なのは書も同じなので、季語は「夏の昼」にすることにした。 この句のおかげで句会における坊主なし(得点なし)記録を密やかに保つことができた。 確かにこの句の出来はそんなに悪くない気もするが、もう少し納得感のあるところに落としたかった気もする。 ところで、祖父母はでき得る限り毎日正信偈を唱えていたが、誰もそんなことをする人がいない兄の家で仏壇の扱いはどのようになるのだろうか。 まさか何周忌かの法要時だけ扉を開くなんてこともなく、花を供えたりごはんを盛ったりもするのだろうか。 子どもの頃、数年に一度「お磨き」といって仏具を金属磨きのペーストで念入りに磨くのを手伝ったことがあるが、定期的なメンテナンスをしなければ忽ち仏壇はくすんだものになってしまうだろう。 そう言えば、祖父の父だという人から遺影がずらりと仏間に飾ってあったが、それはどうするのだろう。 そこにはもちろん父の顔もあって、いつでもその父の顔は血色よく笑っている。 最近、年を取ったものだと思うことが増えた。 あるひとつの考え事に私はひとつの言葉を与えることにした。 思えばこれまで、私は誰かに対して言い淀んで結局言えなかったことがいくつかある。 自分の考えと自分の行動に責任を持つのが嫌で言い淀んだまま口を噤んできた、誰のせいでもなく自分のせいで。 どうしても言えない言葉というのがジャンルを違えて色々とあって、それは言ってしまったらそれをやらねばならないという強い意志に縛られそうだと思っていたからだと思う。 今回私はその考え事の内容に言葉を与えたというよりかは、自分自身の決断について言葉を与えたと言って良い。 これにより私は自身の強い意志に縛られることがあるのかもしれないが、それよりもこのあたりの我が思いについて皮が剥けてくることを願いたいというか、リアルタイムに、煮たり風化させたりせずにそう思うことを的確に受け止め表現できるようになっていきたいものである。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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