デレクが死んだ。
デレクとはメレディスの夫。 メレディスとは、アメリカのドラマ「グレイズ・アナトミー」の主人公。 シーズン11までamazonプライムで観られる。 最新版はシーズン12だけれど、シーズン11はかなり完結感のある終わり方だったので、今すぐに課金してシーズン12を観ようとは思っていない。 何せ1シーズン40分×24話もある。 大変だ。 このドラマは、アメリカの一流病院の外科医の話。 かれこれ10年以上も続いており、私も10年前ほどから追っていた。 何シーズンだったか、数年前このドラマが最も熱かったときの最終話では、「全米の街から人が消えた」と言わしめたとか。 私も、会社員だった頃ツタヤが会社の程近くにあって、当時の最新版が出るや否や当日レンタルで2枚借りてツタヤの小さなバッグをルンルン振って帰宅して、部屋の電気を落として観るのが本当に楽しみだった。 寝不足なんて問題ではなく、1シーズンが終わるまで毎日ルンルンでDVDを借りていったものだ。 シーズン1で研修医だったメレディスたちも、すでにそれぞれの外科の専門分野を牽引するような存在に成長している。 そんな彼女たちの成長物語や、多くの珍しい症例や最新医療やその問題が出てくる反面、院内では人をとっかえひっかえ皆が休憩室で乱交と言っていいほど乱交している。 恋愛して浮気して、結婚して離婚して、略奪して逃避行して、子どもが産まれ養子をもらい・・・生死を分けるような過酷な仕事と恋愛及び家族、それにおける各々の人生、それがこのドラマのネタの尽きないところである。 これまでもとてもたくさんの主要な登場人物が様々な理由で死んできた、非常事態の尽きないドラマだけれど、いくらなんでもデレクを死なせるとは驚いた。 交通事故による脳死、妻メレディスが延命装置を外させるという最期。 多くの医師たちが乗った飛行機が墜落事故を起こしたときも、そんなことってまあなくはないけど・・・と思ったりもした。 そもそも外科の医療現場の話だから生死の話はあっても良いのだが、当人たちに非常事態が起き過ぎなのである。 これだけ長期間のドラマだと役者本人たちの事情や契約事情などでの降板で、物語が構成されていくこともあるだろうけれど。 さすがに多くの意味で食傷気味、と思いながらも観てしまう、非常にテンポが良いドラマである。 それにまあ、私はデレクが死ぬのを止められない涙とともに観ていた。 このドラマを観ていると、随分と日本人的感覚と違いがあることを毎回思わされる。 私は外国で生活したことはないのでこのドラマがアメリカ文化と鵜呑みにするのは良くないと思うが、端々に文化や暮らしや思想の違いが見てとれる。 「I love you」という言葉をパートナーに発することが特別な意味があることは、他のアメリカ映画などを観ていてもそうだからそうなのだろう。 言い手も受け手も共通の認識がある。 また何か同意を求めるとき、相手がYesとかOKとかを言うことも、たとえ言わされたに近い形でも「私が同意しました」という受け手側の責任と意志が日本の場合よりもかなり強固なように思う。 その他にも、やはり「I」が大文字名だけに、「私」を主体としていて、あるいは「私」を主体としていることを自覚していると言った方が良いか、自分の言いたいことをはっきりと言う。 日本人というのは、比較的「私の人生」などといった言葉を、こそばゆいように感じたり、言いたくても言えないような風潮があるのではないだろうか。 「大切なのは私の人生だ」、ということは誰にとっても、どこの国の人にとってもYesであろうに、それを「まあまあ、そんな熱い話しなくても」といなされてしまうことも多いだろう。 医師たちが手術中に身の上話、パートナー、同棲、結婚、セックス、家族、子ども、キャリア、過去、トラウマなどなど、をべらべらべらべらとしているのは、実際の現場がどうなのかは分からないが、「誰かに話を聞いてもらう」「大切な話をきちんと話す」ということは相手にとっての誠意であり、信頼の証のようだ。 それは相手がきちんと「Yes or No」を言えるということを信頼しているということもあるのかもしれない。 受け手の方は「私には何にも話してくれない」と悲しむどころか激怒したりもする。 アメリカを賛美するわけではないが、「私の人生」というテーマこそ話したいのは私だけではないのではないだろうか。 大それたことでない日常を含む大それた「私の人生」だ。 まあ私は大学でライフコース論なるものをやっていたくらいだから、自分のそれも他人のそれも興味ありありなのだけれど。 個人の人生に対する考えを痛快に聞けるのは、このドラマの大いなる見どころのひとつだと思う。 晴れの日が続いている。 天気の話はみんなの話題。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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