先月迎え入れたブラッサイアは新芽を次々に吹き出して1.2倍ほどの葉の量になった。
葉っぱはお日様の方を向いて偏っていくので2週間に一度ほど鉢を回してくださいと言われて一度90度ほど回転させたのだが、既にまたほどんどの葉の表面は窓の方に向いている。 植物が動いている、という様は私にとって確率高く悦ばしいことである。 元々天井まではあと30センチといったところであったが、5センチほど詰めただろうか。 金魚が水槽や池の大きさによって体長が変わるのと同様に、植物も周囲の距離感などは自分で計ってくるものなのだろうか。 そうでなければ葉を切ることになると思うが、元気よく上に向かっているものをちょん切るのはとても忍びない。 先日このブラッサイアの鉢の奥になんだかうごめいているものを発見して文字通り身の毛がよだった。 でもここで見て見ないふりもできないと目を凝らして覗き込むと小さなかたつむりだった。 私は全般的にああいったものが苦手である。 ナメクジやムカデの方がより嫌なのでそうでなくて良かったが、かたつむりも十分に嫌である。 この季節に出たということはこれからもっと増えるのか。 1匹いると50匹くらいいるのか。 卵があったのか。 他の虫も出てくるのか。 恐怖感に心臓がドキドキして、頭を抱えた。 かたつむりがまだ下の方にいて上がってこないだろうことを確認しつつ、部屋の中をうろうろした。 対処法を問おうと、植物の業者さんとは連絡が取れるけれど、発見したのは深夜0時頃。 普段は21時くらいに寝て2,3時に起きると聞いていたので今は連絡できない。 「かたつむり 駆除」と検索すると今そこにいる見えづらい本物よりも鮮明でリアルな画像が出てきて、ぎゃあ、となる。 とりあえずアマゾンで明日届く置き型の駆除剤を購入。 いやしかし、目の前の現象については何の解決もされてはいない。 その場の対処法でビールをかけて溺れ死にさせる方法などが書いてあったが、ビールで溺れた死骸も嫌だし、ビールの糖分でアリとかカビとかわきそうだし、全然善い策とは思えない。 あと検索してまたリアルな画像が出てきても困るのでこれ以上できない。 胃がぎゅうっとなる感覚を押し込めながら再度本物がいる鉢を除くと、かたつむりはこんなに早く動くのか、と思うほど活発に動いていた。 程なくして私は涙をこらえて、見過ごせないつまみ出す、と決断した。 割り箸では鉢の奥に届かない。 菜箸なら届く。 もう本当に恐る恐る、息まで止めて、長い菜箸を鉢に突っ込んで、箸先がかたつむりに触れた。 その瞬間当然ながらかたつむりは殻の中にしゅんと入りこんだ、と同時に鉢の側面に己の身体をへばりつかせているのが感じられた。 あなたが生きていることは何ひとつ悪くない。 でも私はあなたをここにこうしておくのは嫌なのだ。 だから、悪いけれど私はあなたの命への必死さに屈しない。 それに、あなたを殺したいわけじゃない。 落ち着いて落ち着いて、と自分を宥めながらやっとの思いでかたつむりを鉢の側面から剥がし、箸先でつまみながら引き上げ、窓から放り投げた。 マンションの敷地内だしたぶん誰もいはしないだろう。 飛べないかたつむりは地面に落下しただろうが、殻があるから死ななかったのではないだろうか。 もし仮にそうだとしてもその後生きられるか分からないけれど。 菜箸もゴミ箱に捨てて、とりあえず私は戦いを終えた。 翌日業者さんに連絡すると、「ナメクジやダンゴ虫は植物にとって良くないですが、かたつむりはおそらく一過性なものでしょう、また出るようなら対策をお伝えします。」と返信があった。 あれから毎日鉢の中を覗いているが今のところ大丈夫そうだ。 ご依頼のあった命名書を仕上げ、毎月生徒さんの課題として書いている手本を仕上げ、翌日の課題もこなし。 久しぶりに友人と会う約束をした。 自分の言葉やボディランゲージを気兼ねなく駆使して伝え合おうとすることができるような気がするお喋りは、昔から私にとって悦楽のひとつである。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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