子どもは今の期間夏休みだから、9歳の女の子が毎日のように来ている。
おかっぱヘアでよく日に焼けて、薄ピンクの縁の眼鏡をかけた聡明そうな女の子。 最初に来たとき、お父さんの隣にちょこんと座り、ペンをぎゅうっと握りしめ、ぐがががが、と線を引いて時を書いていた。 ここはこういうふうにすると良いよ、いうと律儀にそれをすぐに再現した。 でもまだ、線はトンと置いてすっと引いてね、と言っても、ぐがががが、と線を引いていた。 2回目からはひとりで歩いて来ている。 私がラフなレッスンをするからだろうか、私に慣れたこともあるだろう、本当は快活で少しではないやんちゃな姿を見せ始めた。 学校の授業で暗唱したことを淀みなく早口でしゃべり始めたり、自分の絵のサインを書いてくれたり、「先生って泣いたことある?」と何故か分からない質問をしてきたり、歌を歌い始めたり。 小中学生の頃、私もまる文字や筆記体に憧れて、自分のサインを作ったりしていた。 可愛かったり、カッコ良かったりするものが、例に漏れず私も好きだった。 私が筆記体をすらすらっと書いたから、ちょっとは認めてくれただろうか。 結構好き放題にさせている時間の中でも、線をトンと置いてすっと引くことができるようになってきて、みるみる上達してきた。 一般的に上手な字、というのもいいけれど、今はまる文字でも筆記体でも、「字を書く」ということに興味を持ってくれれば十分だとも思う。 「パパに言わないでね」と真面目にやったこと以外は私たちの内緒。 筆ペンと赤ペンが欲しいと言われたので、本当に「しょうがないなあ」と半ば渋々あげた。 でもたぶん、「先生にもらったの」というのは、私だったら嬉しいと思うので、もし喜んでくれていたとしたら私も嬉しい。 9歳、携帯電話は持っていないけれど、テレホンカードは持っているそうだ。 蒲田を散歩する。 写真を撮られる。 喫茶店でコーヒーを飲む。 美味しく煙草を吸う。 いろんな話をする。 元気に仕事をする。 悲しんで電話をする。 お伺いのメールを書く。 よく分からないブログを書く。 トマトを切る。 しめじをほぐす。 明太子を解凍する。 たまごを割る。 素麺を茹でる。 梨を剥く。 夏が終わる。
0 コメント
あなたのコメントは承認後に投稿されます。
返信を残す |
勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
|