豚バラ肉の薄切りと忘れ去られて久しい糸こんにゃくと芽の育ちそうなじゃがいもと。
肉じゃがでも作ろうか。 本当の肉じゃがは牛肉で作るものだろうか。 本当の、とは。 糸こんにゃくは2週間ほど賞味期限が切れていたのだが、消費期限ではなく賞味期限だから大丈夫だろう。 変な匂いもしないというか、こんにゃくの匂いがするだけだ。 ざざっと水洗いして、水から煮て灰汁抜きをする。 小さくて丸いじゃがいもの皮をむいて、ふたつに切り、油を熱したフライパンに放り込む。 そういえば玉ねぎもあったと、途中でくし切りにした玉ねぎも放り込む。 じゃがいもと玉ねぎが油でコーティングされててかてかになるまで軽く炒める。 一度、大きなお皿にそれらを取って、次に豚バラ肉を炒める。 少し焦げ目がつくくらいまで放っておき、全体の色が変わったら、糸こんにゃくと取り出しておいたじゃがいも玉ねぎを入れ、具の半分くらい水を入れる。 酒もどばどばっと入れて、砂糖もざっと入れて、ほんだしもさらさらっと入れる。 蓋をしてぐつぐつ煮込むが灰汁は出てこない。 玉ねぎのシャキッとした感じが溶けて透き通ったころ、醤油とみりんをだぱぱと入れる。 もう一度ぐつぐつ煮る。 あとは火を消して冷ますだけ。 冷ます、というのもとても大事な料理工程のひとつである。 元より私は料理動画が大好きなのだが、ひと月ほど前にYouTubeで観た中国料理の動画がとても良かった。 炊飯器で作る炒飯のような単純な料理なのだが、ゆっくりと流れるピアノのバックミュージックも静かな女性の中国語のナレーションもとても心地よく、また手元にぎりぎりまで近づいて撮っているため、食材が包丁で切れていく様や、生米が器にぶつかる音などが繊細に響くのも良い。 使っている器も、バットなどの味気ない料理道具ではなく、白のみの単純なお皿でもなく、動画作者が選んだであろう可愛いけれど可愛すぎない品のある食器であるのも良い。 細部まで本当に神経が行き届いた動画である。 しかし、この動画には「怠惰な料理」というような日本語訳の説明があるが、私に言わせれば全然怠惰ではなく、結構面倒な料理である。 とにかく工程が多すぎる。 私がこれまでにたくさん見てきた料理動画は、私の中では何となくの参考料理イメージには蓄積されているのかもしれないが、再現したものはほぼ皆無だ。 どれもこれも私にしてみれば手をかけすぎに思えるのである。 私が過去にこれは本当に簡単で使える!と思ったのは、少し前にTwitterでバズっていた「やけくそハンバーグ」くらいなものだ。 買ってきたひき肉をそのままフライパンで焼いて塩こしょうして出来上がり、というレシピと言えないくらいのレシピである。 しかしバズっていただけあって、ひき肉の新たな食べ方の開発と言って良いほど、なかなか美味しかった。 ここまで手間を抜いておいてなんだが、ニンニクのスライスでもあると完璧である。 豚や鶏ではなく、牛が牛豚合い挽きが良い。 ひき肉なら牛も安い。 牛ステーキのような、とは全然いかないけれど、ステーキ感は十分味わうことが出来る。 それに、強火で焦がすくらいに焼くことで牛の持つワイルドな雰囲気が立ち上り、食べ応えがある。 お酒に良く合う。 料理は多くの人の否応なく身近にある分、何か物事の全体像を説明するときの例えに使いやすい。 料理を「料理道」と考えてみると、こんなに毎日毎日、多くの人がたくさんの練習を積んでいるものって他にないのかもしれない。 それに正面から向き合っているかどうかで話は全然変わってくるけれど。
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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