何年ぶりの海外旅行だろうか。
いま、雲の上である。 コロナが流行して、もはや海外に行く日は来るのだろうか、と思ったりしたこともあったと思うが、その気持ちも鮮明には思い出せないほどに世界中の旅の話を聞くようになった。 パスポートは期限切れで申請するよりも期限内に手続きした方が安いのだけれど、当然のように10年パスポートは使い物にならなくなっていた。 無効なものを記念に取っておく趣味もないのでいつか片付けをしたときに破棄してしまったのだが、無効といえども再申請の際に必要だということを知ったのは、この度の再申請直前のことだった。 日本は島国だから外国へ行くことを「海外」と言う。 大きさは全く違うけれど、オーストラリアなんかも外国に行くのは「海外」へ行くと言ったりするのだろうか。 隣接しあっていて、電車内で国境をまたげてしまうEU諸国は、よその国に行くとき何と言うのだろう。 今回の旅先は、グアム。 学生時代、海外旅行ばかりしていた私は、グアム、サイパン、ハワイ、韓国、台湾は「近くて安全、旅行として簡単、いつでも行ける」と避けてきた場所だ。 息子がまだ小さい今、そしてコロナによって遠ざかってしまった久しぶりの海外旅行、期熟してグアムに向かうのである。 メンバーは夫と息子、そして夫の妹さんの4人。 大人の頭数はひとりでも多い方が良い。 グアムの天気や気温や食べ物やアクティビティなど一切調べることなく前日になった。 もちろん楽しみと言えば楽しみなのだが、日常は濁流なので、その濁流から足を洗えずに前日を迎えてしまったのだ。 あと、幾週間前から熱狂している眼前のヤフオクに引き続きかまけていたのもあるが。 旅行の手配は夫の妹さんがほとんどして下さって、申請や事前手続きも夫がほとんど調べてくれた。 夫と暮らすようになって、私は各種書類申請ごと全般が本当にいよいよダメになってしまった。 夫がそういう文書を読むことに慣れているため、夫だって感じる面倒はさておき、どうしても、夫にやってもらいたい。 面倒がって怠けているだけ、そうとも言えるし、だがもうどうにも文章が頭に入ってこないのである。 事前準備が可能な入国審査の書類も、夫の書いたものに沿って私はほとんど読まずに書き上げた。 普段から、何とかなるだろう、と思っている幅が私の方が俄然広いので、夫はきっと日々至極呆れていることだろう。 私にもたぶんしっかり者として機能する場面というのはあるのだが、それはおそらく双方の度合いの問題で、しっかり者度が強度な相手といる場合には、空席となる怠け者役を自然と担っているような感じである。 旅行前夜になってあれこれ少し揉めながら、しかし息子は元気いっぱいで寝る気配もなく、遅遅としか進められない準備に辟易とした。 荷物をパッキングしている最中、息子は余計なおもちゃやゴミなどをせっせとスーツケースのポケットに詰め込んでいた。 5時起きのプレッシャーから、私は30分ごとに目が覚めて全然眠れなかった。 息子は朝が苦手なのでうにゃうにゃ文句を言って、朝ごはんも食べられない様子。 諸々済ませて早めに出発。 成田エクスプレスと京成スカイライナーとどっちが良いか希望を聞くと、スカイライナー!ということで、スカイライナーを予約。 大人だけなら鈍行で行くけれど、電車好きの彼が喜ぶのでもちろん特急だ。 普段から、新横浜まで行ってそこから東京まで新幹線で帰ってくるとか、ロマンスカーに乗って湘南に行って懸垂型の湘南モノレールに乗るとか、東京モノレールで羽田空港まで行ってリムジンバスに乗って帰ってくるとか、そういう生活をしている。 行った場所で遊んだり、名物を食べる来る訳では無い、ただ行き帰りの乗り物に乗っているだけだ。 息子は、休みの日は一度起きてからほとんど朝寝も昼寝もしないのだが、さすがに睡眠不足のようで、スカイライナーで車窓を見入っているかと思いきや程なくして寝てしまった。 成田空港ではスーツケースを自分が押すと張り切って走り回っていた。 朝ごはんを食べていなかったので、家から持ってきたチョコパイとフレッシュネスバーガーのポテトでカロリー補給。 チェックインや、荷物検査、イミグレーションなどパスポートと搭乗券を求められることが多々あったのだが、息子といると、ついそれへの意識が飛んでハッとすることが何度もある。 然るべきバッグの場所にそれらをしまおうと思ったそのタイミングで彼はふざけたり、転んだり、怒ったりするからだ。 気を取られてバッグにきちんとしまったのかどうなのか分からなくなる、しかも2人分。 旅中もパスポートだけは気をつけなければ。 ところで成田空港はやけに空いている。 今回チェジュ空港のLCCだ。 どこも旅行者で溢れかえっているのではなかったか。 9月も下旬、台風の季節、日曜朝発のLCCでグアムに行く人は全然いないらしい。 さほど大きくない飛行機は、3分の1も埋まっていない。 もはや全員3列シートで足を伸ばしても良いくらいだ。 ぎゅうぎゅうの飛行機というのはそれだけで息苦しく辛いものだが、このくらい空いていると、成田が遠くても、第3ターミナルが離れていても、機内サービスが無くても、座席のモニターが無くても、何よりも快適に思える。 飛行時間は3時間半だが、息子にとったら離着陸以外はとてもつまらない時間なので、色々とお菓子やおもちゃを持ってきている。 それでも不安だなあと思っていたが、やはりまだまだ睡眠不足だったようで、離陸後間もなく寝てしまった。 息子のサイズならもう完全フラットで寝られる。 そして、私も今これを書いている。 雲外蒼天。 雨だって雲の上へ飛び出せばall is blue sky。(宇多田ヒカル『Time will tell』) 旅日記をつけること、昔はそれが旅の一番の楽しみだったと言っても過言では無い。 鮮度が命の旅日記は、数日経ては書けない。 なるべくその日のうちだ。 できればパソコンで書きたい。 最近の息子のいる日々では書けなかったり、途中で頓挫してしまうことも多い。 彼は2時間たっぷり寝て目を覚ますなり窓の外を見て「止まっているよ」と言った。 日々ビュンビュン動く車窓を楽しんでいる彼は、物足りないというよりは不思議そうな顔をした。 〈YouTube〉 織田信長のマーク!麒麟の花押に太平の世を願った【花押の歴史3】 - お字書き道TALKS #045 〈note〉 現役書道家プロファイルVol.4【板谷栄司with鯖大寺鯖次朗】
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勿忘草
無論書道のこと、否応なく育児のこと、などの雑記です。文字自体も好きですが、文を書くのも好きです。 カテゴリアーカイブズ
3月 2024
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